第27章 二人の約束〈宇髄天元〉
「───!───!」
遠くの方から誰かの声が聞こえ、天元はうっすらと目を開ける。
「…───くん、天元くんったら!起きて!」
そこに立っていたのは、かれんだった。
「…また授業サボって」
「よぉ、かれん生徒会長。今日もご苦労サンだねえ」
「もう、ふざけないで!起きてったら!」
屋上の隅にあるボロボロのベンチに寝転がる天元の顔を、かれんは膨れた顔で覗き込む。
3時間目が終わった後の休み時間に、かれんは天元を探しに屋上に来ていた。彼が授業をサボるとしたら、屋上か体育館裏のベンチと決まっている。今日は天気も快晴だったので、きっと屋上にいるだろうとかれんは予測していたのだった。
この場所で天元を起こすのは何度目になるのだろう。
天元は反省する様子もなく、大きなあくびを一つする。かれんはちいさくため息を吐いた。
「…もう、また保護者面談になっても知らないよ?」
「ハイハイ。次の授業から出席しまーす」
「……」
天元に何を言ってもこの調子だ。かれんは返す言葉も見つからない。天元の学問の成績はトップの方ではあったが、だからとてこんな態度は許されるべきでは無い。
かれんはくるりと向きを変えるも、最後にちらりと天元に振り返った。
「…あと、天元くん」
「ん?」
「ネクタイもね」
「…あー…」
ベンチからようやく体を起こした天元は、また一つ大きなあくびをし、眠そうな目を擦っていた。
そして今日も、制服のネクタイを締めていなかったのだ。
「ちゃんと、付けてよね」
「…明日からつけまーす」
…うそつき
この注意も何度目になるのだろうと、かれんはため息を吐きながら屋上を後にした。
・・・
「天元いた?」
かれんが席に着こうとすると、前の席に座る謝花梅がくるりと振り返った。
「…うん、安定の屋上のベンチに。次の授業は出るって言ってたけど」
「まじで懲りないよねぇアイツ。頭いいんだし、ちゃんとすればいいのにさ」
「…うん…」
天元の素っ気ない態度には慣れてきているものの、日に日に天元が遠い存在になっていくようで、かれんは寂しさを感じていた。