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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉




 つんつん─────…


とある日の明け方。
間も無く、朝陽が部屋に差し込もうとしている時だった。

かれんは頬を何かで突かれ、目を醒ました。

「…かれん様。オ早ウ御座イマス…!」

「…! 要さん…!」

「イツモ起コシテシマイ、大変申シ訳御座イマセン…」

「ううん、大丈夫よ。…杏寿郎さんは…?」

「ハイ!アト小一時間程デ、御帰宅サレルカト思イマス!」

かれんの枕元にいたのは、夫の杏寿郎に遣える鎹鴉の要だった。要の返事にかれんは、ほっと胸を撫で下ろす。

要は杏寿郎が任務を終えて帰宅する際、事前にかれんへとそのことを知らせに来てくれるのだった。杏寿郎は、連絡は日中のみすると伝えているのだが(かれんを起こしてしまうのが申し訳ない為)、早朝や夜間問わずに連絡をして欲しいと、かれんは何とか二人を説得することができたのだった。

かれんは、どんな時でも杏寿郎を出迎えると決めていた。

鬼殺隊に身を置いている以上、隊士達は生きて帰れる補償など何処にもない。杏寿郎にもし何かあったらと思うと、かれんは震えが止まらなかった。

しかし、目の前に立ちはだかる猛威と狂気に満ちた鬼に立ち向かう杏寿郎や隊士達の恐怖は、それ以上に途轍もないものだろう。そんな中で隊士達は皆、死物狂いで刃を振るっているのだ。

杏寿郎の妻として、強くならなければと、かれんは何度も胸に誓った。それが炎柱である夫を支える自分の責務だと、かれんは己を奮い立たせた。

そしてかれんは、毎朝祈りを捧げた。
皆がどうか帰還できるようにと。

杏寿郎が、無事に帰ってこれますようにと────…

それでもかれんは、要から杏寿郎の安否を聞くまで、酷く胸を締め付けられるのだった。


「要さん、いつも起こしてくれてありがとう」

「イエ…!イツモ、オ休ミ中ノ所、申シ訳アリマセン…」

「ううん、要さんは何も気にしないで?私が起こして欲しいと、お願いしているのだから。要さんも今日はゆっくり休んでね」

「ハイ!有難ウ御座イマス!」

かれんは布団をしまうと、身支度をして湯浴みの用意をした。そして台所に向かい火を起こすと米を研ぎ、杏寿郎の大好物のさつまいもを刻むと、釜に入れ炊いた。

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