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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第18章 涙を拭いたら〈煉獄杏寿郎 / 竈門炭治郎〉




「えっ、明日から??今回は随分と急ね…。今荷造りしちゃうね」

「ああ、すまない…」

いつもより随分と早く帰宅した杏寿郎。しかしその表情はどこか曇っていた。かれんはクローゼットからキャリーケースを引っ張り出し、数日分のワイシャツなど、出張の準備を進めていた。

「炭治郎は…まだ幼稚園か?」

ワイシャツのネクタイを緩めながら、普段着に着替える杏寿郎。どこか元気のない杏寿郎をかれんは見つめた。

「うん、もうすぐお迎えの時間かな」

かれんが時計を見ると、時刻は間も無く15時になろうとしていた。

「では、炭治郎の迎えは俺が行く」

「え!いいよ!私が行くよ?何か仕事の準備もあるでしょう?」

「うむ…、だが、炭治郎に“週末”のことを詫びねばならない…」

「…そっか、水族館のこと…」

今週末、かれん達は家族三人で水族館に行く予定を立てていたのだ。炭治郎は海の生き物が大好きで、月に一度必ず家族で出かけていたほどだ。炭治郎はその日を毎月楽しみにしていたのだった。


「では行ってくる」

「うん…、よろしくね」

杏寿郎はマンションの一階に降りると、炭治郎の幼稚園バスが止まるエントランスに向かった。何人かの父兄達が既に集まっており、杏寿郎を見ると軽く会釈をした。

いつも水族館に行けることを心待ちにしている炭治郎の笑顔を想うと、何と伝えればいいのかと、杏寿郎は顔を顰めた。今まで突然キャンセルになるなど、一度もなかったのだ。炭治郎をひどく悲しませてしまうと思うと、杏寿郎は深い溜息を吐いた。

間も無くすると、炭治郎を乗せた幼稚園バスがマンションの前に到着した。児童が幼稚園の先生とハイタッチをして、最後の別れの挨拶を交わしていた。

炭治郎は一番最後にバスから降りてきた。炭治郎は杏寿郎を見つけると、ぱあっと笑顔になった。

「とうさん!!」

「炭治郎!お帰り!」

勢いよく抱きつく炭治郎を、杏寿郎はぎゅっと抱きしめた。

「炭治郎くんのお父さん!お久しぶりですね!今日、奥様は…?」

「今日は仕事が早く終わったので、家内に代わり迎えに参りました」

「そうだったんですね!炭治郎くん、とっても優しくて、いつも皆を優先して、一番最後に降りてきてくれるんですよ?」

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