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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第16章 積もるのは、恋〈煉獄杏寿郎〉





〈煉獄杏寿郎から1件のメッセージあり〉



かれんは駅のホームでスマホの通知に気付いた。恋人の杏寿郎からだった。


『かれん。おはよう!丁度10時に駅に着く電車に乗った!いつもの場所でいいだろうか?』


杏寿郎のメッセージにかれんは思わず綻ぶ。口元をマフラーで隠しながら、かれんは返事を打った。


「杏寿郎くん。おはよう!私も10時に駅に着く電車に乗ります!着いたらすぐに向かうね!」


送信ボタンを押して、かれんはふと空を見上げた。薄らとだが、雪が降り始めていたのだ。どうりでこんなに寒いわけだと、かれんはマフラーを更にぎゅっと巻く。雪は薄陽に照らされ、まるで光を纏ったかのようにきらきらと輝きながら宙を舞う。その光景に、幼い頃に感じていた心が小躍りしたくなるような嬉しさが湧き上がってくる。かれんはコートのポケットに入れていたカイロを取り出し、手に当てた。

かれんと杏寿郎の家は真逆の方向なので、デートはいつも現地集合だった。待ち合わせ場所までのこの移動時間に少々焦ったさを感じるも、杏寿郎に会える嬉しさに、わくわくと胸が高まる。
今日は二人のお気に入りの公園に、大きなクリスマスツリー(しかも本物のモミの木でできた)が飾られるとのことで、心待ちにしていたデートだった。

するとまたスマホのバイブが鳴った。


『慌てず、ゆっくり来てくれ!かれんに会えるのが楽しみだ^^!』


杏寿郎の言葉がほっこりとかれんの心をあたためた。


『私も、杏寿郎くんに会えるの、楽しみ!』


かれんはメッセージを送ると、スマホをぎゅっと握り締めた。


・・・


二人が待ち合わせに使っている“いつもの場所”とは、駅の改札口を出てすぐの、外にある時計台のことだった。

かれんは待ち合わせの駅にて電車を降りると、改札口に向かいながらきょろきょろと辺りを見回す。杏寿郎と同時刻の到着予定なので、もしかして近くにいるのではと、すれ違う人達をかれんは目で追った。しかしその姿は見当たらず、かれんはそのまま改札を出た。


 10時着って
 言ってたけど…

 ……!
 もしかして…っ


まさかもう時計台の下にいるのではと、かれんは小走りで駆けていった。

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