第14章 聲の向こう〈煉獄杏寿郎〉
唐突に思いも寄らないことを言われて、かれんは素っ頓狂な声を上げ、二人はそのまま固まってしまった。
「…す、すまない、忘れてくれ!!」
「えっ…!!…きっと、そうです!これは両想いだと、思います!!」
「ワンッ!!」
「「 ! 」」
杏のとびきり元気のいい明るい声が響いた。真っ赤に顔を染める二人を、杏は嬉しそうに交互を見つめている。
「ふふっ、杏も、そうだよって…言っていますよ?杏寿郎さん!」
「そ、そうか!それは何よりだ!めでたいな!?」
杏寿郎は嬉しさのあまり自分でも何を言っているのかちんぷんかんだった。杏寿郎のそんな姿をかれんは、愛おしそうに見つめた。
「杏寿郎さん。あそこのベンチ、見晴らしがいいんです!あそこで一緒にサンドイッチ食べましょ?」
「う、うむ!そうだな!」
まだ頬の赤みが残る杏寿郎の手を、かれんはそっと握った。杏寿郎も照れたように笑い、かれんの手をぎゅっと握り返した。杏も嬉しそうに二人の後をついて歩く。
「ワンワン!」
「はいはい、杏、分かったわ!今日は特別に杏にも、食パンをあげるね!」
「うむ!杏!俺のを全部食べていいぞ!」
「え、ちょっ…杏寿郎さん!?」「ワン!!」
その次の週末、3人は海へとドライブに出かけた。
きらきらと青く輝く波の音と共に、二人の楽しそうな笑い声と杏のはしゃぐ声が砂浜に響き渡っていた。
おしまい 𓂃◌𓈒𓐍