第35章 ●嬲る(夢主の場合)●
一瞬思った。
優しいなって。
ダメだ、私は壊れない。
倒れたって立ち上がるし、悟を愛し続けるんだ。
さっきの言葉をもう一度頭の中で唱えた。
「もういいかな。」
そして夏油は私に覆い被さり、下着の横から挿入した。
悟と同じようにするんだ。
目をつぶって悟の事だけを必死に考えた。
「ハァッ、ハァッ、いいよ、恋、可愛いね。もっと激しくしてあげるね。」
すると、夏油の律動は激しさを増してゆく。
肌のぶつかる音が部屋に響く。
その音を聞きながら、思考が停止してゆく。
いつしか私の上には悟の姿。
「アアッ、ヤダァ、悟、イヤァ、さとるぅ!」
「ああ、イキそうだ、恋、恋!」
私の名を叫び続けながら律動は止まった。
「良かったよ、恋。途中、私の事を悟と呼んでいたね。いいんだよ、それでいいんだ。」
気づくと夏油に髪を撫でられながら囁かれていた。
涙が止まらない。
無理矢理されるよりも遥かにキツかった。
どんな顔して悟に会えばいいんだろう。
あの六眼に全て見透かされそうだと思った。
悟は私を許してくれるかな。
「さあ、帰る支度をしようか。」
夏油に促されて起き上がり、下着をつけてもらい、服まで着せてもらった。
まるで着せ替え人形のように。
そしてキッチンでココアを入れてくれた。
何となく味がおかしい気がしたけど、ボーッとしてるせいかと思い全部飲んだ。
「そろそろ電話しようかな。」
「スピーカーにしてあげるからね。」
電話には学長が出た。
硝子も、そして悟も。
悟と話す時少し声が震えた。
そして、何故だか急に眠くなってきた。
どこにいるのかって聞かれてる。
教えなきゃ、教えなきゃ!
だけど口がうまく動かない。
高山家の別荘と言いたかったのに伝えられない。
そして私は意識を失った。