第34章 嬲る
「そんな奴に謝んな!それよりお前はどこも怪我してないのか?」
「大丈夫だよ……悟。」
少し言い淀んだ恋。
「力ずくではダメな事もあるんだね、よくわかったよ。それにしても悟、この子は昔からちっとも変わってないね。むしろ前より若返ったんじゃないか?」
「恋は昔も今も可愛いよ。これからも可愛いままだよ。」
五条さんが実感のこもった声で言った。
「やはり、恋は悟に愛されていると輝くね。私はね、悟に愛されてる恋が好きなんだよ。」
やはり、夏油さんには全く共感できない。
「意味わかんねえ事言ってないでさっさと返しやがれ!」
五条さんが声を荒らげる。
「せっかちだねえ、悟は。まあ、私も実は色々と忙しい身でね。今から出張なんだよ。だから、恋はここへ置いていくことにする。」
「ここってどこだよ?」
「しゃ……とる……たか……や……ま…….」
恋の様子が明らかにおかしい。
「恋!どうした?」
心配そうに叫ぶ五条さん。
「可愛い可愛い恋ちゃんには先ほど薬を飲ませたんだ。そろそろ効いてきちゃったみたいだね、本当可愛いなあ。」
「おい傑!そこはどこだ?」
「さあね。言った通り私は今から出張なんだよ。じゃあね、恋。ゆっくりおやすみ。」
「夏油!どこか教えて!」
家入さんも会話に入った。
「その声は硝子か?久しぶりだね。」
「呑気に挨拶してる場合?恋!そこがどこか教えて!」
家入さんが恋に呼びかけた。
「べ…………う。」
何か言いたげな恋。
「悪いね、もう深い眠りに落ちてしまったようだ。可愛い寝顔だよ。悟、眠り姫は王子の口づけを待っているよ、では。」
そこで電話が切られた。