第29章 破れる
12月4日、悟の誕生日まで後3日。
プレゼントはまだ決まらない。
今日は約束通りお弁当を作った。
だけど2人っきりでは食べない。
何されるかわかんないから。
「今日から硝子のとこで食べるから。」
昼休み悟と一緒に廊下を歩きながら伝えた。
「ハァ!?何で?心配しなくても襲ったりしないよ。」
ごねる悟。
「キスしたくせに。」
悟を睨む。
「あれはキスじゃなくて舐めたの。」
「キスも舐めるのも同じでしょ?」
「昼間からエロいねえ、また舐めたくなっちゃうじゃん。」
ニヤつく悟。
「バカッ!生徒が見てるでしょ!今朝、保健室でお味噌汁作ったけど悟にはあげなーい。」
一蹴する。
「わかったよ。だから許して、お願い、恋ちゃん!」
両手を擦り合わせながら謝る悟。
「わかったから。もうやめてよ、恥ずかしい。」
その時、職員室から視線を感じた。
補助監督の高山だった。
私と目が合った途端に逸らし、どこかへ行ってしまった。
何?あの目つき。
明らかにこちらを睨んでいた。
保健室に行くと、もう1人の親友が二日酔いで机に突っ伏して寝ていた。
「硝子、起きて。もうお昼だよ。お味噌汁あるから。」
「あー頭いたい。」
頭を上げ、しかめっ面でこっちを見る硝子。
「お前飲み過ぎ。」
「五条、アンタ昨夜何で先帰ったの?」
「恋から明日弁当作るって言われてたから飲みすぎないようにしたんだよ。」
悟が言った。
「はい、悟のお味噌汁とお弁当。」
「ありがとう、恋。」
「硝子はどうする?お味噌汁だけでいい?」
「あー、うん。今はそれでいい。お弁当は後で食べる。」
「わかった。はい、お味噌汁どうぞ。」
「ありがとう。」
「あ、そうだ。悟、高山と仲良いの?」
さっきの事が気になったので悟に聞いてみた。
「高山?ああ、あの子か。特に仲良いとかいうことはないけど、何で?」
不思議そうな悟。
「さっき私と悟が話してた時、こっちを睨んでたみたいだったから。」
「アハハ、五条、あんたまた補助監督にちょっかい出したんだ。」
硝子が笑いながら言った。