第28章 ●見縊る●
悟と別れてから、建人とはいい感じに上手くいってる。
何がいいってとにかく気が利く。
悟はお子さまだから私が色んなところに気を配っていた。
時々、恋ちゃんって呼んだり酷いときにはママって呼んで甘えてきた。
そのくせ、私の事を子供扱いする。
建人は私をとにかく甘やかしてくれる。
色んな事に気が利くから、私を困らせたりしない。
だから、たまに私が彼を甘やかす。
悟と別れてからいつものようにお菓子を作りまくった。
マフィン、ケーキ、パイ、クッキー、パン、おはぎ、わらび餅等々。
1人じゃ食べきれなくて建人にも食べてもらった。
嫌な顔一つせず、黙々と食べてくれる建人。
優しい建人と付き合えて幸せだと思ってる。
だけど、悟のバカがちょっかい出してくる。
だから、悟への気持ちが手放せない。
手放すつもりで別れたのに。
全然手放せてないじゃん。
何やってんだ、私。
「どうしよう。」
「何?何をどうするの?五条の事?」
「硝子……心の声、聞こえた?」
「うん。だだ漏れだよ。」
休日、硝子の家でゴロゴロ。
彼女は昼間から飲んでる。
「私は建人が好きなの。」
自分に言い聞かせるように言った。
「それで?五条になんかされた?」
さすが硝子、何でもお見通し。
「キスされた。」
「ハア?アイツまた?ガキの頃と何も変わってないじゃん。それでアンタはどうしたの?」
呆れる硝子。
「泣いた。」
「何で?キスされて悲しくなったの?」
「頑張って悟への気持ち手放そうとしてたのに、キスされて抱きしめてくるから、腹たってきて。」
「なるほど。」
「もう、腹立つからお弁当作るのやめた。」
「それで最近五条が落ち込んでるんだ。」
「そうなの?」
「うん。昨夜もかなり飲んでたよ。」
「飲みすぎるなって忠告したのに。」
「アイツ、あんたのこと吹っ切れてないよ。」
「時間が解決してくれるといいんだけど。」