第25章 苛まれる
財布から金を出していると、マミちゃんのスマホが鳴った。
「あ、ちょっとごめん。」
僕から離れて電話に出るマミちゃん。
どうせ他の男だろ。
飲み屋の女なんてそんなもんだ。
支払いを済ませてもまだマミちゃんは電話を続けていた。
後で渡せばいいかとカードを自分の服のポケットに入れた。
その後、マミちゃんと一緒に店へ行く。
「ごめん、僕もう帰らなきゃ。」
スマホを見て、慌てて席を立つ。
「えーっ、もう?」
「ちょっと仕事が入ったんだ。ごめんね、また来るから。」
仕事と言うのは嘘。
愛しの恋から、アップルパイ焼いたから帰ってくるの待ってるってメッセージが届いていたんだ。
それは、速攻で帰るでしょ。
アップルパイは僕の大好物。
もちろん、恋も大好物。
そして、ポケットの中のカードの事なんてすっかり忘れてしまっていた。
意気揚々と恋のマンションへ向かい、アップルパイと恋をいただいた。
次の日、硝子から呼び出された。
何かと思い保健室へ行くと、恋もいた。
ホテルのカードを見せられたけどとぼけた。
ポケットに入れてたやつか。
すると、伊地知から全部聞いたと言うじゃないか。
アイツ……硝子に惚れてるからな。
「ごめん!恋ちゃん、許して。」
土下座して謝った。
だけど、恋は何も言わない。
マミちゃんよりも恋の方が好きだと言う事を伝えた。
だけど、恋は泣いていた。
泣きながら話すから何言ってるのかわからなくて聞き返した。
そしたら、逃げ出した。
追いかけようとしたけど硝子に止められる。
「アンタ、本当にクズだね。この台詞、何回目だろう。」
「マミちゃんがしつこくてさぁ。」
「マミちゃんのせいにするな、クズめ!」
仁王立ちの硝子に睨まれる。