第3章 ●愛する●
私には呪力がある。
だが、七海家にそのような人間はいない。
父親の知り合いに呪術師という職業の人がいて、その人から私は特別なのだと教えられた。
そして、その人から学ぶために時々その人の家に行くようになった。
そしてある日、そこで1人の少女と出会った。
「私、恋。よろしくね!建人。」
笑った顔が可愛いと思った。
少女は私より一つ年上で、私と同じように呪術師を目指していた。
彼女と過ごすうちにいつしか恋心が芽生えていた。
だけど彼女には好きな人がいた。
すごく年上で、呪術師として活躍していて、背が高くて優しい人だった。
術師として人間としてとても尊敬していた。
だが、彼は私も彼女の事も裏切った。
彼女の母親と蒸発したのだ。
泣きわめく彼女を必死に慰めた。
好きな女の子が悲しんでいる所は見たくないから。
私は彼女の親友になった。
それでもいいと思った。
彼女の役に立てればそれで。
和之進さんが戻ってきて恋と2人で暮らす事になったと聞いた時、彼女が心配でならなかった。
何かと理由をつけては京都まで様子を見に行った。
数年後、私が呪術高専に入学してひと月ほど経った頃だった。
任務で京都の近くまで来たので、恋の顔でも見て帰ろうと思い龍家にやって来た。
「恋います?」
使用人に尋ねる。
「お嬢なら、部屋にいると思いますよ。」
「どうも。」
そう言って彼女の部屋へ向かった。
しかし、部屋には誰もいなかった。
和之進さんなら知っているかもと思い、軽い気持ちで彼の部屋へ向かった。
「…謝るのよ!」
部屋に近づくと大きな声が聞こえた。
恋の声のようだ。
「ごめん、許してくれ。」
「何で謝るのよ!」
私は何だか胸騒ぎがした。
ガチャ
ドアが開き、恋が出てきた。
乱れた髪、シワが付いている制服、胸元が少し開いている。
そして、胸元に赤い痣があるのが見えた。