第22章 苦悩する
「七海さんが恋に行きましょうって言ってました。」
「恋ちゃんついて行っちゃったの?」
「ええ、手を繋いでました。」
「どうしよう、七海に取られるかも。」
いきなり気弱になる五条先生。
「そもそも五条先生が七海さんから奪ったんじゃなかったですか?」
「よく知ってるね。どうせ、硝子だろう。」
「そうですよ。奪ったから今度は奪い返されるんじゃないですか?」
「ガキに色恋の機微がわかるわけないか。」
「はぁ?」
「機微って言うのはね、表面上はわかりにくい心の繊細な動きの事だよ。」
「それぐらいは知ってます。」
「じゃあ、言ってる事わかるだろ?お前に恋愛相談した俺がバカだったって事。」
そう言うと五条先生はどこかへ歩いて行った。
何なんだ、あの人は。
どっちがガキなんだよ。
恋はあの人のどこが良かったんだろう。
ポケットからスマホを取り出し、恋にかける。
「もしもし。」
俺からの電話には出てくれた。
「恋、さっき五条先生が来て七海さんの事バレた。ごめん。」
「いいのよ。どうせ時間の問題だったし。わざわざ知らせてくれてありがと。」
「五条先生、かなりキレてたから気をつけて。」
「大丈夫よ。建人がいるから。じゃあね。」
「じゃあ。」
建人がいるから………か。
さっき五条先生に言われた言葉を思い出す。
色恋の機微ねぇ………
気づくと辺りは真っ暗だった。
早く帰ろう。
帰ったら津美紀が作った飯食べよう。
伏黒恵13歳。
大人の機微がわからず苦悩する。