第17章 嘲る
数年後、悟と私は高専の教師になった。
強い呪術師を育てるために。
「へぇ?もうそんな事までできるようになったんだ。上達が早いね、恵は。」
「うんっ!俺、強くなるよ。」
この快活な男の子は伏黒恵。
数年前、悟を殺そうとした伏黒甚爾の子供。
父親の甚爾は悟が殺した。
父親の死後、しばらく経ってから悟は恵に会いに行った。
「君のお父さんさ、禪院っていういいとこの呪術師の家系なんだけど、僕が引くレベルのろくでなしで、お家出てって君を作ったってわけ。君見える側だし持ってる側でしょ。自分の術式にも気づいてるんじゃない?」
「たぶん。」
「禪院家は術式大好き。術式を自覚するのは大体4〜6歳、売買のタイミングとしてはベターだよね。恵君はさ、君のお父さんが禪院家に対してとっておいた最高のカードだったんだよ。ムカつくでしょ?で、そのお父さんなんだけど僕がこ・・・」
殺したって言いかけたところで私が悟のお尻を思いっきり蹴った。
「いでっ!!おま、ちょっ、何するんだよ!」
「ごめんねっ恵くん。このお兄さんちょっと頭おかしいの。気にしないでねっ。」
「別に。大丈夫。この人の言いたい事はわかった。アイツがどこで何してようと興味ない。何年も会ってないから何も覚えてない。津美紀の母親も少し前から帰ってない。もう俺達は用済みで2人でよろしくやってるってことだろ。」
津美紀というのは父親の再婚相手の連れ子で、恵より一つ年上の女の子。
父親は禪院という名を捨てるため、伏黒家に婿に入ったのだ。