第16章 ●落ちる(夢主ちゃんの場合)●
長い指が触れただけで、脳が痺れる感覚に陥る。
もっと、もっと、あなたを感じたい。
「もう、お願い。」
懇願する。
そして入ってくる。
肌と肌が密着し、手と手を握り、指と指を絡め合う。
「恋、好きだよ。」
「アァッ、私もしゅ、きぃ。」
気持ち良すぎてもう言葉にならない。
「あぁ、恋、恋。」
何度も名前を呼ばれた。
「アァンッ、しゃとるぅ。」
私も叫ぶ。
痺れきった脳にはもう何の情報も入ってこない。
自分の意識がどこかへ行ってしまい、もう二度と戻って来れなくなるんじゃないかという恐怖。
それを乗り越えた先にある至福の時。
私は自分を手放した。
「恋、恋。」
名前を呼ばれて目を覚ます。
「さと、る?」
「また、失神してたよ。」
「あー、何か頭が変な感じする。」
「おいで。」
広い胸に包まれる。
「失神するのってどんな感じ?」
「うーん。怖い感じかな。」
「怖いの?」
「うん。思考が停止して自分が自分じゃなく思えて、何か怖い。それ乗り越えたら意識が飛ぶんだと思う。まだ2回しか飛んだ事ないからよくわかんないけど。」
「それってやっぱり僕のがイイって事?」
「多分。」
キツく抱きしめて頭を撫でられる。
「恋、好きだよ。」
「私も。」
すごく安心する。
そしてそのまま眠りについた。