第2章 ●忘れる●
登校初日でいきなりの任務を終え、学校に帰って来た。
「ここが恋の部屋よ。」
硝子が寮へと案内してくれた。
「ありがと。」
お礼を言うと硝子はポケットから携帯を取り出した。
「連絡先交換しよ。」
そう言って携帯をこちらに向けた。
「いいよ。ちょっと待ってね。電源切ってたから。」
私もポケットから携帯を出して電源を入れた。
「…ゲッ。ヤバっ。」
画面を見て驚く私。
「どうしたの?恋。」
心配そうな硝子。
「あ、ううん。何でもないよ。交換しよ。」
慌てて誤魔化した。
「じゃあね!また明日。」
そう言うと硝子は手をヒラヒラさせながら帰って行った。
私はすぐさま部屋に入り、携帯を凝視する。
着信10件、メッセージ20件。
全部1人の男からだ。
その時、着信音が鳴った。
画面には愛しい男の名前。
「もしもし?」
「一体今まで何をしていたんです?連絡もよこさないで。」
電話の相手はかなりご立腹の様子だ。
「ごめーん。学校着いたらいきなり任務で…電源落としてたの。」
平謝りの私。
「それにしたって行く前にメールぐらい出来るでしょう。全くあなたって人は」
トントンー
その時、部屋をノックする音が聞こえた。
「ま、まさか。」
私はある予感を抱いて鍵を開けた。
「け、建人。」
私の予感は的中した。
「ようこそ、東京へ。一先ず入らせてください。」
スマホをポケットにしまい、七海建人が部屋へ入ってきた。
ドアを閉めて鍵を掛けた瞬間、後ろから抱きしめられた。
キツく、キツく。
「建人、どうしたの?ちょっと痛い。」
恐る恐る聞くと、彼は少し力を緩めてくれた。
「心配だったもので。」
力なく言う建人。
「ふふっ。可愛い建人。」
「可愛いのはあなたです。」
そう言うと彼は私を抱き上げ、ベッドへと運んだ。
そう、何を隠そうこの七海建人が私の恋人。