第5章 宮廷薬剤師
ガチャッ・・・
「ふーっ!」
夜、あかねは自室に戻ってくると、一息ついてベッドに腰かけた。
コンコン・・・
「?」
窓の外からノックする音を聞き、カーテンを開けると、そこにはオビがいた。
「こんばんは、あかね嬢」
「オビ?
どうしたの?」
「いやね、今日はあんまりあかね嬢といられなかったなぁ、と思って。
これ、どうすか?」
オビはそう言うと、酒の入った瓶をあかねに見えるように持ち上げた。
「じゃあ・・・少しだけね」
そういうと、2人はベランダに腰かけ、酒を飲み始めた。
「お嬢さん、随分小さい上司がついたんだね」
「あら、見てたの?
最年少薬剤師くんよ」
「あかね嬢が抱きついてたところも、バッチリ」
「あら・・・なに、ヤキモチ?」
「・・・・・・そうっすね」
「は?」
冗談、と言って笑おうとしたあかねだが、その前にオビが答え、オビはそのまま酒を煽った。
「なんで・・・」
「そりゃ、相手が男ですから」
オビは、あかねの方を向き、まっすぐ見て言う。
「そ、そっか・・・」
今までこんなにまっすぐ男の人を意識することは無かったあかねは、顔を赤くして、でもどう答えていいかわからなくなってしまった。
「まぁ、あかね嬢を困らせたい訳じゃないんで。」
そう言い、オビは立ち上がり、自分の部屋のベランダに飛び移った。
「じゃあ、おやすみ
あかね嬢」
「あ、うん・・・おやすみ」
そう言い、オビは自分の部屋へ入っていった。
(え、なに、ヤキモチってこと?
別にオビと何にもないのに・・・
なんだろ、この気持ち・・・・・・)
酒のせいなのか、オビのせいなのか、
火照った熱をそのまま外で落ち着けて、
あかねも部屋に入り、眠りについた。