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BLEACH 【短編集】

第1章 幸【さち】


 尸魂界の霊王を護るための組織、護廷十三隊。それぞれの隊長格はどの人も並外れた霊圧とそれに伴った戦闘力を持つ。
 その中でも特に戦闘に特化した十一番隊、その隊長である更木剣八は今日も隊長室で定時の鐘が鳴るのを待っていた。

「剣ちゃーん!!おやつ!」
「…。」
「剣ちゃん、剣ちゃん、剣ちゃん!!」
「…うるせぇぞ、やちる。」

 その大きな上半身をむくりと起こし、耳の横で騒ぐ桃色の髪の少女をねめつける。凶悪犯ばりの顔に屈強な男でも身を引きそうな顔付きだが、少女は全く意に介さないようで間食の催促をしている。そこにで隊長室の扉が叩かれた。

「何だ。」
「隊長、この書類だけ判子もらえますか。」
「…面倒臭えな。そこらへんに判子あるだろ。持ってけ。」
「…分かりました。」

 肩口で切りそろえた手入れの行き届いた髪を靡かせて十一番隊の五席は判子を探し始める。そして判子を見つけて書類に押すとさっさと出て行こうとする。

「オイ、弓親。やちるを流魂街へ連れてけ。」
「やったー!お団子食べたい!」
「副隊長のおやつもうなくなったんですか?」
「ああ。」
「つるりんも呼びに行く!!!」
「あ、待ってください副隊長。隊長、行ってきますね。」
「…ああ。」

 そして隊長室の向こうで三席のぎゃあぎゃあと騒ぐ声が聞こえなくなったことを確認して、再び長椅子にごろりと横たわる。

 それから小一時間は経った頃、定時の鐘の音で再びむくりと身体を起こした剣八は首をごきと鳴らすと隊長室を出た。彼の向かう先は自宅だ。自宅の前まで瞬歩で一瞬で戻った彼は、玄関から僅かに人の気配がすることに無意識に体の力を抜く。そしてガラリと戸を開ける。

「お帰りなさい。」
「ああ。」

 奥から聞こえてきたのは柔らかな声だった。そう、彼は今日妻が非番だったために仕事の時間はずっと妻に会えずにいた。そのため定時になるまで本人も気付かない内にいつもより多く、霊圧を漏らしていたのだ。

「やちるちゃんは?」
「一角と弓親に頼んだ。」
「今日は帰ってこないの?」
「さぁな。」

 そうは言いながらも剣八は弓親あたりが気を使ってやちるを泊めてくれることを知っていた。いつも気配りのできる五席は剣八と華の非番が重ならないときは、いつもやちるを預かっていてくれるのだ。










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