第2章 infinite loop
…言うべきなのだろうか?
言ったとしても、また次の決められたルートが待っているだろう。
話しても無駄に終わる
そう頭の中で誰かに囁かれた気がした。
重たい口をやっとのことで動かし、
1人1人ちゃんと顔を見て話し始める。
『…………兄貴だ……階段から落ちた俺をかばって
…一緒に……悪ぃ…また今度話すから…』
これが精一杯だった。
重たい沈黙の後、その空気に耐えきれずに俯くと
ぽんっと頭に手を置かれまるで子供をあやすように頭を撫でられる。
顔を上げると、悲しそうな顔をしたセトと目があった。
眉を下げ悲痛な面持ちで此方を見るセトがゆっくりと優しく頭を撫で続ける。
「…話してくれてありがとう……辛かったね……我慢しなくて良いんすよ……」
一言一言がとても温かくて、今まで自分を責めていた分
そんな言葉をかけられるとは思いも寄らなかった。
誰も何も言わなくて、
本当は心の中では兄貴より俺が生き残ってしまったことを
皆、残念に思っていたんだろうと勝手に思い込み
分厚い壁を作っていた。
そんな俺に同じ境遇といえど、手を差し伸べてくれる存在がいる。
それだけで俺に大きな力を与えてくれることが心の奥深くまで伝わってきたのだ。
「……さあ、感情の赴くままに…気の済むまで泣いて良いんだよ
今日から僕達は仲間なんだから、頼ってよ」
カノがセトの隣にしゃがみ込み、黒のハンカチをポケットから一枚取り出し俺の頬に押し当て涙を拭う。
…………気付かなかった。
そういえば、先程より幾分視界がぼやけていた。…俺は今、泣いているのか。
涙で視界がぼやけていて、皆の顔がよく見えない。
だが、皆の表情はわからないがこちらに目が集まっていると言うことだけはなんとなくわかった。
カノのハンカチを借り、少し熱を持った目にハンカチを押し当てる。
じんわり涙で濡れたハンカチをそのままに俺は気の済むまで
心の中に溜めていたモノ
幼少期に体験した悲しい思い出を全て涙に変えてはき出したんだ。