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progress ~東リべ卍~R18~

第43章 Requiem 場地



「…エスペケはあのあと無事戻ってきたぞ。」


口をついて出た言葉はそんなことだった。

とりあえずこいつに、
それだけは伝えとこうと思った。


ランは顔を上げてたちまち目を潤ませた。

何を考えてんだろう…
こんな顔、俺は今まで1度も見たことねぇぞ…

まさか……
俺のために涙まで流すのか…?

だとしたらマジでわかんねぇよ。
そこまでして俺を引き止める意味…。

お前にはもう…
三ツ谷がいんじゃねぇか。



「じゃあ圭介もお願いだからさ…戻ってきてよ」


ミサンガをキツく巻き付けた俺の手首を掴んだまま言うランに、あからさまにため息を吐いた。



「だからお前さ、俺の話聞いてたか?
俺はお前のこと」


「どうされてもいいよ!!
圭介が行かないでくれるなら、どうされてもいい!」


唖然とした。

なに…言ってんだこいつは……




「… ラン」


「圭介になら、何されてもいいよ…
私前にさ、そう言ったじゃん」



みるみる鼓動が早くなっていく。

俺の中で、何かが音を立て始めた。
まるで今すぐ砕け散りそうなガラスの壁に、亀裂が入ったみたいに…。



「だからさ、お願い…行かないで?
だって圭介、言ったじゃん。
ずっと変わらず私のそばにいてくれるって!!」


必死で叫ぶランを引き寄せて、
つい抱きしめてしまった。

俺の2つ目の願望がまた、
こんな形で叶ってしまった。



「っ!けい…」


頭に手を置いて自分の胸に押し付け、キツく抱き締める。


「なんで…んな事言うんだよ馬鹿野郎っ」


ランから漂ういつもの香りが
こんな強烈に近くで感じられたことは無い。



まずい……
こんなことして…
俺は、馬鹿だ。
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