第42章 rouse一虎②
俺はよく、ふとした瞬間に思い出す。
バラバラに散らばった家の中。
泣いている俺、項垂れている母親。
「覚えておきなさい一虎。
俺は怒ってるんじゃない。
これは躾だ。」
胸糞悪い記憶。
思い出す度に黒い憎悪が俺の中を支配する。
「わかるな?一虎。
この家で一番偉いのは?
なんの不自由もなく暮らせてるのは誰のおかげだ?」
いつでも偉そうに人を見下す人だった。
そんな惨い記憶を初めて人に話した。
そしたらその人は俺にこう言った。
自分も一緒だったと。
そして…
「じゃあ一虎、一緒に強くなろう。
心も、体も。
そんなことなんか忘れてしまうくらい。
いつかどこかで会った時、鼻で笑ってやれるくらい。」
弧を描くその唇と瞳。
ランは初めて、
俺の黒い心の中に一筋の細い光を刺した人間だった。