第39章 respective
「ねぇそういえば、ランちゃん知ってた〜?」
「え?」
「部長ね、もうちゃあんと三ツ谷ブランドのロゴあるんだよ〜」
「えぇ?!」
それもかなり大事なことだ。
なんで私には何も教えてくれてないの…?
「…どんなロゴ?」
「こういう…ね、見たことない?」
「あ…」
安田さんが書いた王冠のロゴは
三ツ谷がよく制服の上に着ているカーディガンに刺繍されているものだ。
「これ…ロゴだったんだ…」
もうこんな素敵なものまで考えついていたとは…
「なんか私…隆のこと
実はホントは全然知らないのかも…」
安田さんや、周りの部員たちの方が
遥かに三ツ谷といる時間は長いだろうし
自分よりも知っている気がした。
どうしようもない空虚感と嫉妬に似た感情に苛まれる。
「はぁ…私も自分のロゴでも入れようかな…」
「あぁ!それいいじゃん!
どんなのにする?」
「ん〜…そうだなぁ…」
ランはノートを広げ、
それからそれへと絵を描いていった。
それを見つめている安田さんの目はみるみる見開かれていく。
「……。」
(すっかり忘れてたけど…そういえばランちゃんて…めちゃくちゃ絵が下手くそ…じゃなくてっ…個性的なんだった…)
「…あ〜あのさランちゃん、
もう少しシンプルなものにした方がいいと思うよ。
たとえば星とかハートとかさぁそういう簡単な」
「でもそれじゃ隆のに負けてんじゃん」
「……。」
(どういう反抗心?)
「安田さんこんなのどぉ?
ユニコーン。カッコよくない?」
「えっ!」
(ユニコーンなの?コレ??)
「じゃあコレどお?人魚!」
「えっ…?」
(コレ…人魚…??なんかアマビエみたい…)