第37章 render
集会が始まるまであと小一時間ある。
いつもの武蔵神社にはまだ誰もいなかった。
「すっげーなーマカロンなんて。
作るのめちゃくちゃ難しいやつじゃん。
こんなによく頑張ったな」
男の子なのにそんなことまで分かってくれる三ツ谷にランは感極まって抱き着いてしまった。
「うん…すっごい頑張ったの…
ちょー大変だった…おかげで寝不足」
「そっか…そんな無理しなくてもいいのに。」
階段に座り、ギュッと抱き包んで頭を撫でてくれる三ツ谷の暖かさが居心地良くて、目を瞑った。
隆にいい子いい子されるだけで…
疲れなんて吹き飛ぶ…
本当に優しい…
「隆…今日は本当にごめんね。
あと、ありがとう」
小さな声でそう言うと、三ツ谷はクスッと笑った。
「…俺は超幸せもんだよ。
ランの何もかもが、好きでたまんねーから。」
そんな甘い言葉をサラッと平気で囁いてしまう三ツ谷に胸が鷲掴みにされる。
「たとえお前がホントに浮気してたとしても…
多分嫌いになんてなれねぇし、責めたりなんてできねぇ。」
「えっ…浮気なんてしないよ!絶対っ!」
「うん…もしもの話だよ。
そしたら俺は、きっと認めたくなくて、相手の男殺しちまうよ」
サラッと恐ろしいことを言う三ツ谷に一瞬戦慄したが、前にも安田さんと話している時に同じようなことを言っていたのを思い出した。
それほどまでに想われてるって、
やっぱり嬉しいな…
「あ、そーいや、キスマークもう消えただろ?」
「えっ、あっ…でも全部は消えてないよっ…
確か太ももの辺りはまだ…」
「見えるとこについてないと意味ねーじゃん」
そう言うやいなや、じゅっと首筋に吸い付いてきた。
「んあっ…!ちょっとっ…」
パッと口を離した三ツ谷の笑みが、街灯に照らされて妖艶で…思わずドキドキとしてしまった。