第36章 regain
家に到着し、ランは三ツ谷の前で、恐る恐る箱を開けた。
「っっっ!!!!」
あまりの衝撃にくらくらと目眩がした。
それはみごとに潰れてしまっていて、
ランが一生懸命デコった部分の面影すら無かった。
三ツ谷も目を丸くしている。
その隣で、万次郎は自分のチョコケーキを食べながら覗き込んできた。
「わーっ!ははっ!すっげぐっちゃぐ」
ドガッ!
ランは万次郎にゲンコツを落とし、
俯いたまま顔をあげなくなった。
「あー…ラン?
チョコケーキだろ?俺好きだよ。」
「食べなくていいよ……」
「だから食うって!」
三ツ谷はフォークを掴むと、
ひとさじ口に入れた。
「んん!うまいよマジで!」
「まじ〜?どれどれ〜?」
万次郎がゲンコツされた頭を擦りながら横からひょいっと摘んで口に放り込んだ。
「……ん…わ…ほんとだー…
え?てゆーか俺とおんなじもんだよな?
三ツ谷の方のが美味いんだけど…なんで?」
「それは愛のエッセンスが入ってるからだよ!
ね!!ラン!!」
エマがそう言ってニッと笑った。
「なんだよそれ…ずりぃ。」
ムッとする万次郎。
「はい、ケンちゃん、あ〜ん♡」
「っ、だからなんでそれなんだよ」
「うちのこと散々待たせたんだから今度こそいーでしょー?!」
何も言えなくなったドラケンは、
顔を赤らめて大人しく何度もエマにあ〜んとされていた。
「うちのも愛のエッセンス入りだから!♡」
「ん……うまい…」
ドラケンは照れくさそうに口を動かしていた。