第36章 regain
いつの間にか、
自分の隣から万次郎が消えていた。
「んな危なっかしいもん反則だろ?」
万次郎はいつの間にか、男を踏みつけていた。
一瞬すぎて全然見えなかったほどだ。
「そっかー…てめぇはあんときそんなもんで… ランを…」
ドガッ!!!
「ぐはぁっ…」
「待てよマイキー。それは俺の役目だろ?」
「ん。そーだったね。
でも1発くらいやんねぇと気が済まなくて」
万次郎が男の上から退くと、
三ツ谷は冷徹な表情を貼り付けたまま男から奪ったナイフを突きつけた。
「こんなもん使って俺の女脅してんじゃねーよ」
向けられている光る切っ先を見つめて男は顔面蒼白にしている。
「俺はてめぇみてぇなクズじゃねぇからよぉ…
こんなもん使わないでてめぇを殺してやるよ」
三ツ谷が放り投げたナイフがカランッと音を立てて床に転がった。
そしてすぐさま男に殴る蹴るの攻撃をし始めた。
ものすごい狂気に満ちた表情だ。
万次郎も三ツ谷と同じような眼光でそれを静観している。
「まっ…待って…それ以上やったら…っ」
まるで、正気を失った時の万次郎が2人いるかのようだ。
ど…しよう……
誰も止めてくれる人がいない。
こんな隆…初めて見た…
怖い……
怖くて近寄れない……
その時、扉の方から音がした。