第33章 realm
放課後、
もう来ないと思っていたのに、万次郎は迎えに来た。
「え」
「送ってく。」
「いいよ別に…」
「それが俺の役割だから。」
優しく笑って当たり前のようにそう言うので、
ランは何も言えなくなった。
「ごめんな」
三ツ谷の中学までの道中、
万次郎はついに口を開いた。
「答えはわかってるからさ。
ちゃんと振られたいかなって」
万次郎の明るい言葉に鼓動が跳ねる。
「なに…それ…
人のこと散々困らせといて…」
「…お前は…ダチの彼女だし、俺の家族だし…
俺、そんな女に手を出すような最低な奴にはなりたくねぇんだ。もうなっちゃったかもしんねぇけど…、」
"忘れてほしい。"
小さな声なのに、
そう、ハッキリと響いた。
「は…?」
忘れて…ほしい?
「なに…それ…」
「俺…お前と二度と笑い合えねぇような関係にだけはなりたくねぇんだ。
だから、ホント悪かったって思ってる。」
「………。」
で…?
忘れてほしいっ…て?
あんなことしておいて
簡単にこっちが忘れられるとでも思ってんの?