第30章 reach
きっと自分のことよりも
隆のことよりも
誰よりも何よりも気にかけなきゃいけない人だった。
それなのに…
私の脳の損傷がまた大きなダメージを負って
その傷口が開いた。
ある事件が起きた。
それがきっかけで
私はどんどん壊れていった。
一時的に記憶喪失にもなったりした。
あらゆる記憶が脳内から抜け落ちて行った。
だから私はいつしか
万次郎の、東マンの、
変わっていく様、そして暴走していく様を
見過ごしていた。
祖父の土地で1人だけ平凡な高校生活を送っていた私。
私だけが知らなかった。
東マンがどうなっていたのか。
万次郎がどうなっていたのか。
私は全てを投げ出して
万次郎を捜し続けた。
あなたを救えなかった
みんなを救えなかった
せめてもの贖罪として…
万次郎を…
私が………ーー。
全てを終わらせられるのは
死んでもそばにいてあげられるのは
私しかいないから。
万次郎は
私を巻き込みたくなくて
逃げていたんだろう。
でもやらなきゃいけない。
私がこの手で止めなくちゃいけなかった。
万次郎の抱えている孤独と闇に気付けなかった、
私自身を絶対許さないように。