第30章 reach
私は万次郎と一生一緒にいる、そばにいるって
約束したのに守れなかった。
私がいないと万次郎はダメになるって分かってたのに
私はあのとき…
万次郎と一緒に闇に堕ちてあげることすらできなかった。
いつだか、
万次郎とこんな話をしたよね。
ねぇ、万次郎は覚えてた?
"俺さ…たまに……
自分じゃどうしようもできないような黒い衝動が出てきそうになることがあるんだ。
"もう1人の俺" みたいなのを…感じることがある。
自分じゃどうにも制御できねぇ感じのさ…
俺が俺でなくなる気がして…
それがすごく…怖いんだ…。"
"あのね、万次郎…
私も、あるよ…そういうの。
もう1人の、黒い私…
自分が邪魔だと…嫌だと…思う存在をね、この世から全部消し去りたくなるの。私の手で……"
嫌いな男、クズな男を皆殺しにしたいとか…
好きな人にだけ囲まれていたいとか…
そんなふうに思う時がある。
その黒い衝動は
幼い頃から持っている。
"たまにね、夢も見るの…
ひたすら暗い海の底を歩いててね、すごく不安になる…
目指す指針が何も見えなくて、どこ歩いてるかもわかんない。
足元も暗くて見えなくて答えも目的も見えなくて…
本当にこっちに進んでいいか、道を誤ったんじゃないかとか…焦って迷って、結局どこにも行けなくて…訳もなく不安になって…ドツボにおちいって……"