第29章 rapture
「ごめんね、タケミチ…
無力な…私で……なんにも…できなくて…」
「… ランさん?…なに…言って……」
ランは涙を流しながら、
先程の万次郎と同じような優しい笑みを浮かべている。
「…あなたのこと、信じてる。
こんなことに、ならない未来を…
ずっと…死んでも信じてる…から…だから…」
パンッ
それは一瞬だった。
自分の頭を撃ち抜いたランは倒れた。
それはまるで
スローモーションに見えた。
「う…わぁあああぁぁああああ!!!!」
タケミチが叫びながらランに駆け寄る。
「さよならは…言わない…から…
また会った時は、私を叱って…ね…」
完全に息を引き取る寸前、
涙を流しながらランが言った最期のその言葉の意味を、タケミチは理解した。
これが夢だったらと
そんなことを思っても何も変わらないことは
もうわかっていた。
そしてただ強く決意する。
この災厄の未来を変えることを。