第6章 recall
2003年8月13日…
場地を後ろに乗せた一虎のバイクは夜の街を颯爽と走っていた。
「なぁ一虎ぁ?どこ行くんだよ?」
「もうすぐマイキーの誕生日じゃん?
俺らでプレゼントすんだよ!CB250(バブ)!」
「えっ。でもバブなんて誰も持ってねぇよ?」
「いいからいいから!!」
確かに、万次郎はずっとバイクならバブ以外は嫌だと言っている。
しかも、あの海での事件…
原付まで失った万次郎にやはり場地は負い目を感じていた。
「着いたぞ!ここだ!」
と連れてこられたのはバイク屋だった。
窓ガラスの奥には、
輝かしいバブがあるのが見える。
「こーれ、盗んじまおう♡」
一虎の言葉に目を見張る。
「盗むのはダメだろ?!そんなんで手に入れたバブ、マイキー喜ばねぇよ!」
「ばーか。そんなの言わなきゃいーんだよ。俺ら中坊が単車乗るには先輩のもらうか、盗むかしかねーだろ?」
一虎は全く悪びれる様子もなくノリノリだ。
小道具まで取り出している。
「マイキーの喜ぶ顔、見てーだろ?
あいつがずっと憧れてる単車だぜ?」
「そうだけどよぉ……」
一虎はずんずんと進んでいってしまう。