第23章 rebel
「私は、ラスコーリニコフの犯罪に対する哲学がわりと好きだなぁ。
罪を犯すことによって彼の理論によって築き上げられた意志と人間性に潜む良心とのせめぎ合いっていうのかな…精神が崩壊していく様が徹底的に描かれてる…
でも最後は本当の愛に気付いて更生を誓って…
なんといってもさ、最後に救いがあるところがいいよ」
ランの発言に、半間が「あん?」と言って眉間に皺を寄せ、呆れたように口を開いた。
「そんなもんいらねぇだろ。
人類は《凡人》と《非凡人》に分けられる。選ばれた少数の非凡人は人類の進歩のために現行秩序を踏みこえる権利をもつ。
すなわち、殺人が正当化されるっつぅ思想を、そんな不確かで形のねぇもんに崩されるのか?
甘えだなぁ〜…抜けてんなぁ〜…不完全だなぁ〜…
心底…ダリィ〜〜」
「え、えぇ…まぁ感じ方は人それぞれだからなんだっていいけど、好きだから何度も読んでるんじゃないの?」
すると、半間はふふっと目を細めた。
「反面教師ってやつ。
いろいろ豪語しときながら、人間をたった2人殺したくらいでこんなんなっちゃう小物感がウケる♡
選民思想的な悪党感が生々しくてゾクゾクすんだよ♡」
「………。どんだけゾクゾクしたら気が済むんだよ…」
少々呆れて呟いた瞬間、
トントン
ノックの音が聞こえた。
「あーい」
「なんであんたが返事すんのよ」
半間に突っ込んだ瞬間、
ガララッと扉が開いた。
そしてまたたちまち目眩を起こしそうになる。
なぜなら
入ってきたのが
稀咲鉄太だったからだ。