第23章 rebel
ところでさ……と、
ランは恐る恐る口を開いた。
「さっきから、何を読んでるの?」
すると半間は本の表紙を向けながら、
ニヤリと笑って答えた。
「罪と罰」
「…それってドストエフスキーの?」
「そー。もう何十回も読んでんなー」
その言葉に思わず苦笑いする。
「すごい好きなんだね。それ。
あんたの両手の墨もまさに罪と罰だしね…」
むしろどんだけ好きなの?と思った。
ランももちろん、
世界中で有名なこの作品は読んだことがある。
殺人を犯す主人公の狂気、混乱、絶望、歓喜といった目まぐるしく変化する心理描写に圧倒させられたのを覚えている。
主人公の青年の異常な心理状態の描写が真に迫りすぎて、読んでいるこちらの精神がどうにかなりそうなレベル。
実際に読んでるあいだ毎晩おかしな夢を見た。
"選ばれた非凡人" だと思っている凡人の主人公は、たくさんの人を救う"良い殺人" だと肯定して殺人を計画したところから始まる。
新たな世の中の成長のためなら一般人の道徳に反してもいいとの考えを持っていたからだ。
半間は主人公のラスコーリニコフに自分を重ねてるんだろうか?
とランは思った。