第19章 redress
「え……?」
墓に行くと、線香の煙と共にしゃがみこんでいる人影があった。
万次郎かな?
そう思って近づくと、
その背中の特攻服には見覚えがあった。
首のない天使…
長い黒髪がサラッと夜風に揺れるのがわかった。
「……圭介?」
その声に、場地が驚いたように振り返った。
「… ランっ!
音立てずに近寄んじゃねーよ…
ビビって腰抜かすかと思った」
「あ…ごめんっ!」
まさか彼がいるとは思わなかった。
さっきまでしていたタケミチとの会話を思い出し、顔を直視できなくなった。
ランも隣へ腰を下ろし、線香をあげ手を合わせる。
その様子を、場地は横目でジッと見つめる。
ゆっくり目を開けたランは、場地に笑いかけた。
「お墓参り来てくれてたんだね。
ありがとう。」
「…別にお前に礼を言われることじゃねぇ」
「でも、ありがとう。」
場地が目を逸らして立ち上がると、ランも立ち上がった。