第17章 resolute
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「そっか…兄貴の話、聞いたか…」
佐野家の墓の前で、
万次郎、ドラケン、
そしてタケミチと千冬がいる。
「カッケェ人だったな。真一郎くん。」
「うん。」
ドラケンの言葉に、万次郎が墓を見ながら頷いた。
雨足が強くなってきている気がした。
傘から滴り落ちる雫が下に落ちては弾けを繰り返す。
こんな話をする日に雨が降っている時ほど悲しい空気になることはないと思った。
ドラケン 「タケミっち、俺らもわかってんだ。
あの事件は今更どうにもならねえ。
場地も一虎も、あんなことしたかったわけじゃねぇ」
万次郎 「そう…今更しょうがねぇって…わかってる。
でも心がついてこねぇ。」
万次郎は静かにそう呟いてから墓から目を逸らして立ち上がった。
「場地と一虎が盗もうとしたバブは、兄貴が乗ってたバブなんだ。
俺の誕生日に、プレゼントしてくれるはずだった、兄貴の形見のバブ。俺の今の愛機だ。」
そう言った万次郎の視線の先には、雨に打たれているバブが佇んでいた。
「あれから2年…
場地のことは許した。でも…知らなかったとしても…今更どうにもなんなくても…
兄貴を殺した一虎だけは、一生許せねぇ…
場地が一虎側に行くのもな。」
突然変わった万次郎の表情と声色に、ゾクッと体が反応した。
幾度となく葛藤し、尚もまだ昇華されていない哀しみとやるせなさが、殺気を纏って体現されているように感じた。