第16章 rational
「1人で帰れるか?」
ランがバイクに乗ると、三ツ谷はやっぱり兄貴肌の視線を向ける。
「大丈夫だよ。このバイクだし。」
「…そーだな。
寝坊して明日学校遅刻すんなよ。
ランとは学校違ぇからそこまで面倒見きれねーぞ」
「ねぇ隆…」
「ん?」
「私は…圭介のことも、万次郎のことも、堅のことも…東マンのみんなのことも大好きだけど…でも…」
ランは小さく深呼吸してから
うっすら笑顔を向けた。
「愛してるのは…隆だけだからね…」
その言葉に、三ツ谷の鼓動が跳ね上がり、目を見開いて目の前の存在を凝視する。
その愛しい存在は、月光に照らされて、今までにないくらい優しく微笑む女神みたいな…神々しくも妖艶な別次元の何かに見えた。
「じゃあ…おやすみ。
今日はありがとう。」
そう言ってブォンブォンと夜中の近所迷惑を考えない相変わらずの大きな音を鳴らしながら、すごいスピードで去っていく姿を、見えなくなるまで見つめていた。
「はぁ……俺のバイブルも
なんかすげーことになるかも…」
苦笑いしながらも、
胸いっぱいに温まった感情を抱きながら、
ランとは逆方向に猛スピードでバイクを走らせた。