第11章 radiant
万次郎は、気づかれないように
小さく深呼吸した。
「ごめん…違うな…。
俺、ランがいなきゃ、生きていけねぇから
だから…誰かのもんになっても、
俺の傍から離れないで。…頼む。」
少しの沈黙の後、
ランの腕が背中に回り、
これでもかというほど強く抱き締められた。
「…うん、わかってる。
私の傍からも離れないでね。」
思わず涙腺が緩みそうになる。
「これ、2度目の約束だね。
でもいいよ。万次郎が安心するなら、
何度だって約束するよ。」
ふふふっと笑うランの息が
耳に当たって鼓膜を揺する。
「一緒に頑張ろう。
黒い闇に、負けないように。
いつだって味方だよ。」
「…俺も。ずぅっと、ランだけの味方。
一緒に、2匹の"泳げたい焼きくん"になろうぜ」
「はは…いいね、それ。
でも泳げたい焼きくんて最後どうなるんだっけ?」
「さぁ?忘れた…」
青空の下、抱き合ったまま笑い合う男女を、
真っ白い雲だけが見下ろしていた。
「好きだよ、ラン…
多分この先も、ずっと。」
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