第10章 return
「お疲れ様です。ランさん」
そもそもランがいるとは思わなかった。
「お疲れ千冬〜よく来たね!
じゃあお湯入れて来なくっちゃ」
「お湯?いや風呂に入りに来たわけでは」
「まぁ座れ千冬。ほれ、ファンタだ。飲め。」
「はぁ…」
千冬は促されるままファンタを飲みつつ
"緊急" とあんなに切羽詰まった感じで言われた意味を探していた。
一体何が始まるんだろう…?
しばらくして、「お待たせー!」と言ってランが千冬の前に、麺の入った器を置いた。
どう見てもペヤングだ。
「え?」
「どうぞ召し上がれ。」
「色は普通なんだな。」
ニッコリ笑って席に着くランと、若干強ばったような表情をしている場地と、突然目の前に置かれたペヤングに疑問符しか浮かばない。
「…え、なんで…???」
「お前ペヤング好きじゃん」
「や…ま、そっすけど…」
「いーから早く食えよ。
俺の言うことが聞けない?
それともランの言うことが聞けない?」
「うっ……わかりましたよ。
よくわかんないけど…いただきます…」
そう言って手を合わせてずずずっと一気に麺を啜った。
ランも場地も、カッと目を見開いて凝視する。
息を飲んで千冬を見つめた。