第10章 return
「申し訳ありませんでした」
「ごめんなさい!私たちの責任です」
万次郎は頭を下げられながら、なにすんだ!と抵抗している。
「虫けらが頭下げて娘が治るのか?!社会のゴミが!!クズが!!クズ!!クズ!!」
「あ"?」
「黙れマイキー…」
「娘はずっと昏睡状態だ…
顔も…体も…傷だらけでっ…ぅぅうっ」
両親は号泣し始めた。
「なんでだ…この子がお前らに何をしたんだ?」
3人は頭を下げたままその嗚咽を静かに聞いている。
「あんなに優しい子で…あんなに可愛かった娘が…こんなっ…変わり果てた…姿でっ…うぅ…」
床にボタボタと涙が落ちていく。
苦痛と悔しさに満ち満ちたその言葉に、奥歯を噛み締める。
「帰ってくれ…っ…
もう…二度と…私達の前に現れないでくれっ」
2人は肩を支え合って去っていってしまった。
ランは割れた花瓶を片付けていく。
小さく指を切ったが、痛みを全く感じなかった。
受け取ってもらえなかった花を集めて
涙をこらえた。
両親の怒り、悲しみは最もなものだと思う。
きっと刻まれた心の傷はこんなもんじゃない。
「ごめんなさい…」
指の血を見つめながら、
誰にも聞こえない声で呟いた。