第3章 react
万次郎は、ある日の稽古休憩中、
ランが庭の地面に何かを書いているのを見かけた。
「……なんだ?それ。」
卍
その記号みたいな文字をなぞりながら
ランは答えた。
「これ、おめでたいとか幸福の意味があるんだよ。
知らない?」
「…見たことあるよーな気ぃするけど、
意味まで知らねーな。」
卍
その文字をなぞりながら、ランは死んだ母親に、仏教や様々な宗教においてこれは幸福の象徴なのだと教えられたと語った。
「マンジって言うんだ。万次郎に似てんね。」
そう言って少し笑ったランを見て、万次郎は目を細めた。
何年もたった今、ようやく少しずつ、笑えるようになってきてよかったとホッとする。
そして、アッと閃いた。
「来年、中学になったらさ、
俺、あいつらとチーム作ろうと思ってんだよね!
それに、この記号使うわ!ん〜いい考え。」
「はぁ?なにそれ。」
「ケンチンや場地、三ツ谷、一虎とかとさ。不良の時代を作るんだ。まずは東京征服!」
ニッと見せる白い歯を見つめてランは眉間に皺を寄せる。
「くっだらない…なんのためによ。」
「お前のためにだよ」
目を見開いてポカンとした表情になるランを見つめながら万次郎は口角を上げた。