第2章 rampant
ある日の稽古中、
万次郎と私がいつのまにか本気の喧嘩に発展していて、誰にも止められないほど物凄いことになっていた時は、
真一郎は私たち二人を引き止めて叱った。
なにをしていても、私たちは真一郎にだけはどうしても逆らえない。
喧嘩だって力だって弱いのに、真一郎には私たちをどこか圧倒するような存在感と威厳があった。
私たちを唯一叱ってくれる、
心の底からきちんと向き合ってくれる
そんな存在だった。
「そこまでして負けたくねぇんだな、お前らは。」
「「負けたくないよ!!」」
私たちの声が重なった。
「そうか…。でもな、よく聞けよ2人とも。」
真一郎は真剣な目をして私たちの頭に手を置いた。
「本当に大切なことは、喧嘩に勝つことじゃねえ。
自分に、負けないことだ。」
幼い私たちにはまだ、
その言葉の本当の意味を
理解できずにいたかもしれない。