第56章 窮地を救うは誰の手か
謙信様に会いたい。
結鈴は謙信様を困らせていないだろうか。
リビングのソファで、謙信様はよく結鈴を膝の上に乗せていた。
結鈴もそこが定位置のようで、嬉しそうにしていたものだった。
「会いたいな…」
そんなつもりはなかったのに目が潤み、視界が曇った。
今後のことを話し合うという今夜。
謙信様の居ない今後……考えないようにしているのに、考えなければいけない。
龍輝の『近くに居る気がする』は少し希望を持たせてくれたけど、はっきりした確信はないのだから、現実をみなければ…。
(会いたいよ、謙信様…)
一か八かでワームホールに頼ってみるべきなのか、ずっと答えが出せないでいる。
くいっと袖を引っ張られた。
龍輝「ママ………」
声をひそめた龍輝が小さな体を寄せてきた。
(ん?どうしたんだろう)
問いかける間もなく龍輝がひそひそ声で囁いた。
龍輝「ママ、クマがいる」
「!?」