第56章 窮地を救うは誰の手か
――――
――
「けんけん、ぱ!ふふ、龍輝、上手ね!」
ひとしきり遊んで河原に腰を下ろす。
ザーという川音と鳥の声しか聞こえない。トンボが風に乗って飛んでいる。
爽やかな秋風が少し汗ばんだ肌に気持ちいい。
「気持ちいいねぇ」
龍輝「うん」
龍輝は隣に座り、小石を川へ投げて遊んでいる。
ぽちゃん!
石が落ちた場所に小さなしぶきがあがる。
「ねえ、龍輝……パパや結鈴に会えなくて寂しくない?」
こっちにきて10日。
龍輝は一度も寂しいとは口にしなかった。
無理しているのではとずっと気になっていた。
龍輝「ちょっとね。でもさ、ほっ!」
言いかけて途中でまた石を投げた。今度はさっきよりも遠くに水しぶきがあがった。
石投げなんてしたことがないから楽しいんだろう。
「でも?」
龍輝は私の顔を見てニカっと笑った。
龍輝「結鈴は近くに居る気がするから寂しくないよ。近くに居るっていうか、近くに来たって感じ」
「え……?」
意外な答えに面食らう。
てっきり『信長様や蘭丸君が居るから』という理由を想像したから。
(そういえば双子には不思議な繋がりがあるってTVでやってたな…)
双子のうち片方が『嬉しい、幸せ』と感じると、遠方に居る一人がなんとなくそれを感じ取ることもあるそうだ。
同時に同経験をしたり、双子には不思議なエピソードが多々ある、と番組で紹介されていた。
(龍輝もそうなの?)
「じゃあ結鈴は元気そうな感じする?」
まさかね、と思いつつ聞いてみると、龍輝はうんと頷いた。
(ほんとに!?)
思わず身を乗り出した。
龍輝「大変そうだけど元気っぽいよ。なんかねー、時々ピンクだよ」
(ん?)
「…何がピンクなの?」
龍輝「うーん、わかんない」
(漠然としたイメージみたいなものなのかな。でも元気そうならいいや)
「早く会いたいね……」
龍輝の頭を撫でる。褪せた色の金髪は謙信様を思い起こさせた。