第55章 その手をもう一度
(雷が信長様を狙って落ちてきたわけを知りたい…)
ワームホールに詳しい佐助くんが居ないのがもどかしい。
「こちらのお召し物は明日以降、お直しして綺麗にしますね」
ふぅ、と小さく息を吐いて不安を飛ばす。
(そろそろ寝よう)
元気そうに見えるけど、信長様も色々あって疲れているだろうし。
信長「待て」
畳んだ衣類を持ち、立ち上がろうとしたところを引き留められた。
何故か信長様は不満そうな顔をしている。
(どうしたんだろう、何か粗相をしたかな?)
「はい、なんでしょうか」
信長「それはなんだ?」
『それ』と目線で言われて見ると、床の上に忘れられたもう一つの贈り物があった。
「申し訳ありません!これも信長様への贈り物です」
着物にばかり意識がいって、すっかり忘れていた。
可愛らしい柄の和紙が張られた箱を差し出す。
信長様は中身を粗方予想しているのか、嬉しそうに目を細めた。
待ちきれないと言わんばかりに太く長い指が蓋を持ち上げ、中の白い紙をどけると……金平糖がぎっしりと詰まっている。
信長「こっちは着物と違い随分と色鮮やかだな」
そう言って青色の金平糖を珍しそうにつまんで口に放った。
「あ、それは確かサイダー味です。そして紫色は巨峰味で、緑が……」
信長「さいだー?よくわからんが、悪くない。
貴様のいた時代は金平糖に様々な味付けをしているのだな。面白い」
信長様は説明した順に巨峰味、メロン味、イチゴ味と口にしていく。
美味しそうに食べてくださるのは嬉しいけど……
「はい、今夜はこれでお終いです!寝る前に食べるとお身体に触りますよ?」
手が伸びてくる前に素早く箱に蓋をして体の後ろに隠す。
信長様の表情がみるみる不機嫌になる。