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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第55章 その手をもう一度


いつかのように膝の上に横抱きされ、強く抱きしめられた。
懐かしい信長様の香りが身体を包みこみ、その近さに体が強張った。


信長「安心しろ、とって食いはしない。貴様が軍神に再会するまで俺が守ってやる。
 命を拾い上げてくれた礼だ」


囁く低い声は鼓膜を心地良く通り過ぎて、身体の内へ染み込むようだ。


「のぶ、なが様……、ありがとうございます。わ、私…」


今になってやっと自分の気持ちと真正面から向き直った。

一年間ずっと傍にあった支えが、温もりが……ない。

『守る』と言ってくれた、大好きな人が居ない。

大事なモノがごっそりと抜け落ちた喪失感に、身体が小刻みに震えてきた。


信長「なんだ?」


言いたい事なんてわかっているだろうに信長様は先を促した。


「あいた、い…です。謙信様に、会いたいんです。
 ゆ、り……、結鈴にも会いたいっ…」

信長「……」


涙が止まらない。


「ふっ、ぅ…」


抱きしめてくれている腕が『一人じゃない』と言ってくれる。

信長様の着物を掴んだまま子供のように泣きじゃくり、その間、信長様はずっと背中を撫でてくれた。


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