第55章 その手をもう一度
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話終えると信長様は楽しそうに口角を上げた。
信長「時を超えるなどと大それたことを幾度となくやってのけるとは、貴様、想像していた以上に面白い女だな」
「まだ自分でも信じられないんです。ワームホールを開く力があるなんて」
でもこの力はコントロールできない。
私の力が未熟なのかどうかわからないけど、謙信様達と離れ離れになった。
それにここは北国で、希望していた越後ではないのは確かだ。
「謙信様とはぐれてしまいました。時も場所も違うところに行ってしまったんだとすると、もう会えないかもしれません」
無情にもあっさりと紐は切れた。
繋いでいた手が離れた瞬間の感触が忘れられない。
(このまま謙信様と永遠に別々の道を歩むのかもしれない)
もう一度ワームホールを呼ぼうか…でも制御不能の力をまた使うのは怖い。
膝の上に置いた手を握る。
「なんの手掛かりもありません。
謙信様にも結鈴にも、このまま会えなかったらと思うと……」
龍輝がいるからしっかりしなきゃと、心の底に押し込めていた感情があふれ出す。
取り乱してもなんの解決にもならないとわかっているのに止められなかった。
静かな部屋に私の嗚咽が響き、わずかな沈黙のあと、信長様がため息を吐いた。
信長「ようやく感情をさらけだしたか。
母親とは難儀なものだな。涙したくともずっと気を張っていただろう。思う存分泣け」
腰に手が回り信長様の方へ引き寄せられた。
(私が泣きたいくらい不安だってこと、信長様にはお見通しだったんだ)