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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第55章 その手をもう一度


「龍輝、信長様の持ち物に触っちゃ駄目よ。見るだけ、ね?」


甲冑の周りをグルグル見て回っている龍輝に注意すると、


龍輝「うん!わかってるよ!信長様は怖いんだもんねっ!」

「こ、こら!」


『しー!』と人差し指を立てるも、龍輝は悪びれなく笑っている。
恐々信長様の顔を伺いみると怒ってはいないようだ。


「重ね重ね申し訳ありません」

信長「良い」


信長様は怒るどころか機嫌良さそうに龍輝を目で追っている。


(困ったな、龍輝に礼儀正しくしろなんて急には無理だし)


頭を抱えていると龍輝がスライディングのように滑り込んできて、膝の上にドスンと乗ってくる。


「わわっ!龍輝ったら!」


勢いに負け、ひっくり返りそうになったところを信長様が片腕で支えてくれた。


信長「龍輝、やんちゃなのは構わんが母に怪我をさせるなよ?」


龍輝は信長様の言うことをすんなり聞き入れ、こちらを振り返った。


龍輝「ママ、ごめんね?」

「う、うん。もう少しゆっくり膝に乗ってくれると嬉しいな」


よしよしと頭を撫でて人心地つく。


(龍輝のことはおいおいと…。夕飯はお弁当があるから良いとして、寝られるようにしなくちゃ)


破れた窓や壁を見て、何かで塞がないと、とアレコレ考えを巡らせる。

信長様は腰を上げると片腕を懐にいれた。


信長「貴様はここに居ろ。火をおこす材料を取りに行ってくる」

「はい。では私はもう少し過ごしやすいように工夫してみますね」

龍輝「ママ、僕、信長様と一緒に行きたい」


行きかけた信長様の足がピタリと止まった。


「え、駄目だよ。お散歩に行く訳じゃないんだから邪魔になるでしょ?ママのお手伝いしてよ」

龍輝「えー、僕、信長様がいい」

「いやいや、ちょっと待って。信長様がいいって…龍輝~」


頭が痛い。


信長「ふっ、かまわん。龍輝、そのかわり俺の役にたて」

龍輝「うん!」


キランと目を輝かせ龍輝は信長様にくっついて行ってしまった。


「大丈夫かな。信長様って意外と子供に寛容なのね…?」


いつも大人に囲まれていて、子供と接しているところを見かけたことはなかった。

意外な一面だ。


「よーし、龍輝が居ないうちにぱぱっとやっちゃうかな!」


襷がけをして作業に取り掛かった。


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