第55章 その手をもう一度
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一旦話を打ち切り、見つけた山小屋へいくために立ち上がった。
信長様が立ち上がると龍輝が興奮してぴょんぴょん飛び跳ねた。
龍輝「わぁ、信長様、かっこいいなぁ」
しきりに本物の甲冑姿に感動している。
信長様がお付きの人をおぶっている間、私も下ろしていたリュックを背負った。
抱っこ紐は手に持ち、龍輝の手をしっかり握った。
起伏は少ないものの、時々倒木があり迂回して進む。
人一人背負って歩く信長様が心配で何度も振り返ってしまう。
信長「幼子ではないのだ、ちゃんと後ろにいるから前を向け」
「なんだか振り返ったら信長様が居なくなってしまいそうで…」
あっという間に離ればなれになってしまった謙信様を思い、シュンとなる。
信長様も、目を離したら直ぐにどこかへ行ってしまうんじゃないかと心細い。
信長「俺はどこにもいかん。居なくなりそうなのは貴様のほうであろう?」
「そうですか?」
歩みを遅くして信長様の隣に並んだ。おんぶしているので少し前かがみになっている信長様と近い距離で目が合った。
信長「貴様は一瞬で姿を消し、忽然と現れた。
二度あれば三度あるのが世の常だ」
「今は消えません。多分ですけど。信長様を置いてどこにも行きませんから安心してください」
(強く願わなければワームホールは発生しないはず。自然発生した場合は別だけど)
信長「良い心がけだ。今度勝手にどこぞへ行こうとすれば、力づくでも引き戻すからな」
不遜な笑みで言いきられ絶句してしまった。
信長様なら有言実行するだろう。
(う、信長様って相変わらず強引な方だな)
「は、はい。肝に銘じておきます」
返事をすると信長様が機嫌よく笑った。