第55章 その手をもう一度
――――
――
柄が折れた古い箒を見つけ、それで小屋の中の汚れを掃き出していく。
埃がもうもうと白く舞い上がり、龍輝がクシャミを連発したので小屋の外に待機させた。
破れた窓や戸から入り込んだ木の葉や枝が大量にあり、なかなかの大仕事だ。
川で水を汲んできてハンドタオルで、床を拭き清めた。
「はぁ、とりあえずこんなもんかな。続きは明日以降にしよう」
当たり前だけど小屋の中には布団類はもちろん調理器具や食器類は無かった。
小屋を支える柱はどれも細く、壁や床板も薄い木材が使われている。
穴が開いて空が見えている屋根も、最初からそう丈夫ではない材料で作ったのだろう。
一部屋だけで収納スペースはない。
料理を作る土間もとても簡易的に造られている。
(短期滞在のために建てたのかな)
使えそうなのは囲炉裏と、古い網籠、穴があいたザル、木桶がひとつだ。
(サバイバルな生活になりそう…)
一抹の不安を抱えながら龍輝を連れて信長様達の元へ戻った。