• テキストサイズ

☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第55章 その手をもう一度


手当てを済ませ、荷物の中から信長様から借りていた外套を出して二人に掛けてあげる。


「よし、これで手当ては終了!あとは休めるところを探さなきゃ」


寝たままの二人を残していくのは気が引けたけれど、早くしないと夜になってしまう。


「龍輝、探検にいくよ!」

龍輝「おー!!」

「ふふ」


元気いっぱいの龍輝を連れて林の奥へと足を進めた。



――――

人の手が入っていない林を歩くのは思いの外大変で、丈のある草木で龍輝が歩けず、おぶるはめになった。

いくら歩いても林を抜けることはできなくて場所の特定につながるものは発見できなかった。


「人が住んでいる様子もないし、すごく山奥に居るのかな」


大きな川を見つけることができたのは幸運で、水の心配はなさそうだ。

30分程周囲を見て回った結果、ボロボロの山小屋を見つけることができた。


「重い!龍輝、おりて~」


20キロ弱ある龍輝をおんぶしていたせいで汗だくだ。


(着物じゃなくてスウェットを着てくれば良かったな)


ワームホールを抜けた先で火事に遭遇し、山歩きするとは思わなかった。

龍輝はストンと地面に降りて暗い小屋の中を覗き込んだ。


龍輝「今夜、ここに泊まるの?」


龍輝がうーんと顔をしかめて嫌そうにしている。


「仕方ないよ、怪我をしている人も居るし。
 夜になると気温も下がるから風を凌げるだけでもありがたいと思わなきゃ」


龍輝の色違いの瞳が暗い山小屋の中から、私の方へと向けられる。

謙信様と同じ澄んだ色の瞳を見るだけで心が救われる気がした。


龍輝「ねぇ、パパと結鈴にすぐ会える?」

「っ…うん、会えるよ。ママはそう思ってるよ」

龍輝「早く会いたいな」


(会いたい、謙信様…)


ついさっきまで手を握り合っていたのに。

私に、微笑みかけてくれていたのに。


「ママも早く会いたいよ。それまで元気で居なきゃね!
 さ、できるだけここを綺麗にしよう」


ちょっとすると沈みそうになる気持ちから目を逸らした。


/ 1735ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp