第55章 その手をもう一度
――――
――
ドサっ!
着地に失敗して尻もちをついた。
「いたっ!龍輝、大丈夫!?」
龍輝「うん、平気。ママ、ここどこ?」
見るとすぐ傍には信長様とお付きの人が倒れていて、二人共意識を失くしているようだった。
(炎の中からは脱出できたんだ)
謙信様と合流はできなかったけど、ひとまず胸を撫でおろした。
「林の中……みたいだね」
抱っこ紐の留め具を外して龍輝を下ろし、背負っていた荷物を下ろした。
こもっていた熱が飛んでいき、ホッとした。
龍輝が早速信長様に歩み寄っていき、私は少しだけ周辺を歩いてみた。
近くに人の気配はないけど林の奥までは見通せない。
(すぐそばに危険はなさそうってことでいいかな)
判断が正しいのかいまいち不安だったけど、意見を求める人も居ないし致し方ない。
「さっきは夜だったけど、今は昼すぎくらいかな」
太陽の位置でなんとなく時間に検討をつける。
肌寒い気温だ。
「この花は寒冷地に咲く……秋の花だ」
現代で勉強した植物の知識が早速役に立った。
周りは針葉樹ばかりで、でも気をつけて見れば林の奥には葉が色づいている木々が見えた。
(林を抜けてみないと場所の把握は難しそう。信長様達を休ませる場所も探さないと)
引き返して信長様とお付きの人の様子を見る。
信長様の外傷は手や腕に軽い火傷を負っているだけだ。
咳き込みが激しかったところをみると煙を多く吸ったか、熱気で喉を傷めるかしているかもしれない。
「呼吸困難は起こしていないみたい、良かった」
気管支をひどく痛めていれば大変なことになるところだった。