第54章 佐助の不安
―それから数日後
佐助「謙信様、ただいま戻りました」
夜中に佐助が偵察から戻ると、謙信が火の番をしていた。
奥には光秀と結鈴、信玄が並んで眠っている。
佐助は三人を起こさないように忍び足で歩き、謙信の傍に寄った。
謙信「遅かったな。何かわかったか?」
佐助は頷き、胸元から地図を取り出して説明を始めた。
佐助「ここはやはり北海道で、俺達は今この辺にいます」
佐助は現在地点に指を置いたまま、反対の手でここ数日の足跡をなぞった。
佐助「南東に向かって出発したところ湿原に着きました。この湿原は500年後の地図にも載っている有名な場所です。
現在位置を把握して海沿いを目指したところ、大きくはありませんが集落がありました。
話を聞いて回りましたが舞さんと龍輝くんの姿を見かけた人は居ませんでした」
謙信「そうか。それで今がいつなのかわかったか」
小さく肩を落とし、謙信は先を促した。
佐助「現在は慶長18年。西暦でいうと1613年頃のようです。
謙信様と別邸を発ったのが1583年でしたので、約30年後の時代に居るようです。」
謙信「30年後の世か…」
多少動じたものの謙信は落ち着いた様子で地図を見ている。
佐助「はい。ただこの辺の人達はその日暮らしの生活で、内地の出来事はおろか年号もあまり興味はないようでした。
集落の人達のそれぞれの話を聞いて総合的に判断すると30年後ではないかと判断しました」